らくらくらいふ

おだやかでおちついたきもち、それだけ

風景

午前1時

甲南PA上り線の小高い丘から見下ろした

トトロみたいな田舎の風景も

午前1時なのだろうか

冷たい風、真っ暗な田んぼ、民家の小さな明かり

あの風景の途方もない切なさを思い出すと

生きてることが夢みたいに感じられる

全身を支配する切なさに

その瞬間だけ

この現実を離脱できる

この世界は夢なんじゃないかって気になる

今この瞬間

布団の中から急に

田舎町にテレポートしてしまったら

寂しくて切なくて寒くて

途方に暮れてしまうだろうな

午前1時の田舎町ほど寂しい場所はないもの

でも

そういう切なさに期待してる

人生の抜け道みたい

偽物の現実から抜け出すためのトンネル

となりのトトロだとか

サマーウォーズだとか

誰もいない田舎町をひとりで歩きたい

寂しい、誰かいませんかって

とぼとぼ歩きたい

帰る場所を忘れて歩きたい

どこに帰ればいいのかわからないって

今自分が何をしているのかも

自分が誰なのかも

どうやってここに来たのかも

なぜここにいるのかも

自分という存在について全て忘れてしまって

何もかも分からなくなってしまって

田舎町の、誰もいない、寂しい夜を

ただ歩いていたい

 

 

 

 

 

午前1時

両親と弟が暮らす家の近くのあの森も

今は午前1時

寂しくて暗くて怖い森

午前1時の森を想像して

寂しい気持ちになって

誰も使ってない寂れたブランコに

頭の中で乗る

茶色い鎖がひんやりと冷たい

手についた赤錆、暗い森、木々のさざめき

あと10回こいでジャンプする

午前1時にブランコこいでる25歳は

間違いなく普通じゃないから

普通じゃない出来事が起こってしまって

人生をめちゃくちゃにしてほしい

ブランコこいで、ジャンプして

着地した地面が2003年だったらいいな

全部の全部をもう一度体験したいから

みんなにやさしいことば

いまならかけてあげられるから

 

 

 

 

 

母校の高校の廊下も午前1時

生徒がいない寂しくて暗い廊下も午前1時

想像の中で歩こう

透明人間になった気分

幽霊になった気分

死んだらきっとこの廊下を彷徨うだろうな

この廊下には未練と切なさが詰まってるから

午前1時の廊下を頭の中で歩けるなら

2011年の廊下も頭の中で歩けるはずだ

2011年の自分はこの廊下に存在していい人間

だから遠慮なく歩かせてもらうよ

みんなの顔が懐かしいよ

こっちのほうがよっぽど現実だ

この現実から2019年2月18日午前1時31分

眺めてやろうぜ

こんな悪夢、誰が想像できたんだ?

布団の中でひたすら過去に縋ってる人間

空想の中で生きようとして失敗して

現実から抜け出す他の方法を探ってる

何か言葉をかけてくれないか

僕と代わってくれないか

いいかげんやり直させてくれないか

 

 

 

 

現実逃避

現実がふんぞり返ってるぜ

俺様が偉いんだって

唯一向き合うべき存在で

唯一価値のある存在で

唯一、そのすべて。

逃げ出すってまるで向き合うことを義務付けられてるみたいじゃないか

別の道を進むことを逃げるなんて言わないだろ

その偉そうな口ぶりに腹を立ててしまったから

頭の中で空想するのだ

これは抵抗運動だ

頭の中で別の場所へトリップして

頭の中で過去へトリップして

頭の中でかつての友達にあって

頭の中でほめられて

頭の中でみんなに大事にされて

頭の中で傷つけてしまったみんなに

頭の中でやさしい言葉をかけて

頭の中で忘れたい過去やり直して

頭の中でみんなの幸せそうな顔を見て

頭の中でこんなに幸せなんだって

頭の中でこうなりたかったんだ

頭の中でずっとこうなりたかったんだ

頭の中でもうずっとここから離れたくない

頭の中でかえりたくない、かえりたくない

ここに、望んだ全てがある

過去にしかない、幸せは過去にしかない

頭の中にしか僕の居場所はない

頭の中にしか安らげる場所はない

幸せで、穏やかで、切なくて、それが心地よくて

2011年の廊下にへばりついて

もういやだ、もうだれにも邪魔させない

ここから離れるもんかって

どんな力にも引き剥がされないように

2011年の廊下にうつぶせになって

周りの目も気にならないほど必死になって

4階の廊下にへばりついてたら

敷き布団にへばりつく自分に気づいた

布団にうつぶせになってたからお腹がくるしい

明日は早く出勤して面談の準備しないと

鼻の奥がツンとして

また涙が出てきそうだったから

うーって敷布団に顔を押し付けた

すぐに、戻ってきてしまう

現実の力が強すぎて

現実の渦に呑み込まれてしまって

現実に堕ちてきてしまった

頭の中だけでいいのに、もう

本物だろうと偽物だろうと

もうどっちだっていいよ

この世界が偽物みたいなもんなんだから

頭の中で生きたっていいだろうが

 

 

 

 

甲賀PA上り線の午前2時を想像して

すっかり民家の明かりも消えた田舎町

僕はその寂しいあぜ道をとぼとぼ歩いて

布団の中と田舎道

田舎道と布団の中

交互に往復して

2011年の廊下と布団の中

布団の中と2011年の廊下

交互に往復して

「××君なら絶対頑張れるよ!」

「××君なら大丈夫!」

2012年春のエールと2019年の現実逃避のブログ

 

交互に往復して

 

 

 

どっちが現実なんだっけ?

って言えば現実のこと意識から消せるかな

どっちが現実なんだっけ?って

明日の仕事の不安抱えながら呟くな

重苦しい心がこっちへこいって怒鳴りつけるから

どんな空想も手慰みにしかならなかった

それでも、誰が聞くもんか

 

 

 

 

おばあちゃんちで食べたスイカ

町田の予備校前で食べたスイカバー

町田の踏切、厚木の踏切

園芸学の講義室

自衛隊の飛行機の轟音

札幌行きのスカイマーク

雪の北大、試験中に嘔吐した女の子

失敗の記憶と使わなかった赤本と

小田急相模原駅の舞い散る桜と

小田急線急行新宿行きの風

女子高生の短すぎるスカート

木造アパートの2階の男の排尿音

真っ暗な保育園と真っ暗な団地

amazarashiのジュブナイル

東京農大世田谷キャンパス

アセロラドリンクだらけの自販機

曇天、雨、黒い傘

入学式へ向かう葬列みたいな真っ黒の集団

排水溝に流れる桜の花びら

桜並木

中央林間

桜並木

深夜2:15の桜並木の中心に立って

今自分はどこにいるんですか

今自分はなんのためにここにいるんですか

こことはどこだ

木造アパート前の桜並木か

何もかも終わってしまった布団の中か

2:16

終わってしまった人間ほど

終わりを認めたがらないんだ

2:17

この文章には終わりがない

後悔の風景はどこまでも続いていく

頭の中に住まわせてくれ

2013年の桜並木に閉じ込めてくれ

2:18

もう寝なきゃ

明日のために

明日なんかねえよ

お前に明日なんか

なければよかった

それでも働かなきゃ

2:19

今ここで泣いたって

もうなんにもならないよ

終わってしまった人生の責任をとるための今日だ

2:20

ここから先は償いの時間だ

今は償いを生きているんだ

失敗を繰り返してきた報いだ

どれだけ償えば幸せになれるかな

2:21

永遠に続いていく

もう一度やり直したいって言いながら

1度もやり直せなかったから

その罪を償うために生きている

失敗の責任を引き受ける人生を生きている

それを拒絶してるせいで

重苦しい毎日はいつまでも続く

 

 

 

 

 

深夜の田舎道

誰もいない廊下

小樽の雪道

自衛隊の轟音

永遠の夏

7畳に敷いた布団

2:25

何もかも終わった